更年期障害のつらい症状である不定愁訴(ふていしゅうそ)を改善するために、よく用いられるのが、漢方薬です。
漢方医学は、痛みには鎮痛薬といった西洋医学のような対症療法とは異なり、からだ全体の状態を総合的に診て、崩れたバランスを元に戻す治療を行います。そして同じ症状でもその人の体質によって処方される漢方薬の種類が異なるというのも大きな特徴です。からだ全体の調子が整うことで、一つの症状だけでなく複数の症状が改善されることもめずらしくありません。
漢方医学には「気・血・水」という考え方があります。「気・血・水」とは、人間のからだを構成している基本的な要素です。この3要素は互いに影響しながら支え合い、バランス良くからだの中を循環している状態が健康であり、そのバランスが崩れると、さまざまな症状となって心身に影響を及ぼすといわれています。
気とは、目に見えないもので、人が活動するために必要とするエネルギー(元気・生命力など)をさします。気は通常、頭から手足の方に向かって流れていますが、この流れが逆流してしまうと、のぼせ、めまい、頭痛、イライラなどの症状が現れます。また、この気の流れがスムーズにいかなかったり、十分な量の気がない状態でもさまざまなからだの不調が現れます。
水とは、血液以外の体内にある水分(リンパ液、涙など)をさします。
水は通常、からだのいたるところに必要な量が存在していますが、ある部分に偏って存在することによって、めまい、むくみなどの症状が現れます。
血とは、血液やその流れのことをさします。血液の流れがスムーズにいかなかったり、その量や機能が不足してしまうことによって、冷え症、頭痛、肩こり、疲労倦怠感などの症状が現れます。
女性ホルモンのバランスが乱れる更年期は、からだそのものには異常がないのにさまざまな場所に不調が起こりやすくなっています。このような不定愁訴(ふていしゅうそ)への対処は、からだ全体のバランス(「気・血・水」のバランス)を整える漢方医学が得意とする分野の一つです。
更年期障害の不調を訴える女性の多くは、肩こり、頭痛、のぼせ、冷え、ふらつき、イライラなど同時にいくつもの症状に悩まされています。それに対し、例えば、血のめぐりを良くする漢方薬を処方することによって、肩こりも頭痛も、のぼせ、冷え、ふらつきも、血のめぐりの悪さからくる複数の症状を改善していくことができるのです。一つの症状に一つの薬という対症療法ではなく、からだ全体のバランスを元に戻す治療法。漢方のチカラを上手に取り入れて、「気・血・水」のバランスを整え、更年期をのりきりましょう!
更年期症状に用いられる漢方処方には、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などいくつもの種類があります。
当帰芍薬散は主に、むくみや冷えなどの症状がある(体力が虚弱の)方に、加味逍遙散はいらいらや精神不安などの症状のある(体力中等度以下の)方、桂枝茯苓丸は冷えのぼせなどの症状のある(比較的体力のある)方に使われる処方です。
連珠飲は、のぼせやふらつきを感じる(体力中等度またはやや虚弱の)方に特におすすめです。
まずはご自身の一番つらい症状はなにかを知ることが大切です。自分の体質にあったものを選びましょう。